2019.08.27
第3回 明かりについて考える

生活に明かりは必要である。これは誰しも反論のないことだろう。だが、どんな風に明かりを採るべきか?考えたことがある人は少ない様に思う。そんな明かりについて考えてみたい。

昼間の明かり

昼間は余程の雨の日でない限り、太陽光が十分な明かりを提供してくれる。これは南側がもっとも顕著であるが、真逆の北側も天空光という空に反射した優しい光が室内を照らしてくれる。違いは陽だまりができるか否かくらいか。

昨今、兎に角部屋を明るく明るくとオーダーを受けることが多い。もちろん明るいことは良いことなのだか、明る過ぎるのは如何なものなのかと疑問もある。というのも、昔の日本家屋のように部屋の中にもっと陰影があっても良いのではないだろうかと思うからである。

昔の日本家屋には「奥」があり、少し暗めの「奥」から陽光まばゆい庭を眺めるなどすると心落ち着き時の流れを忘れることもしばしである。新築でもこの様な陰影を持つ「奥行」のある空間を作ることにより、もっと過ごし易くなるのでは無いかと思うのである。窓の大きさと位置を綿密に検討することにより外部よりの光の強さと室内から見える景色をコントロールするのだ。

コア・リビング

(リビングから庭を眺める。室内が仄かな明るさである事によって、庭のまばゆい光の方へ視線が誘導され室内がより広く感じられる。)

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(お寺は北側に庭を配している事が多い。そうする事によって北側の庭は木々の表の顔(葉は南向きに茂る為)を眺める事ができる。また室内の暗さにより、庭がより鮮明に浮かび上がっている。)

さて、次は夜の明かり。

これに関しては、専ら照明器具に頼るのだが、僕の理想は光源は見えないけど、必要な明るさがあること。そして、部屋の中に陰影があること。である。

その上できることなら天井に器具を付けたくない。間接照明も作為的にならない様にしたい。とこだわりが多い。

という事で、ペンダント(天井吊り)、ブラケット(壁付)、フロアライト(床置き)、デスクライト(台置き)を複合的に配置する多灯分散照明を採用する事になる。こうする事でとても落ち着いた奥行きのある空間演出ができ、ゆったりとした居心地が出来るのではないかと考えている。

コア・多灯分散

(多灯分散にての照明計画例。様々な高さや位置から適度な光を得る事により、陰影がしっかりと見える。また、適度な明るさで安らいだ時間が流れる。)





2019.08.20
第2回 素材について考える2(内装編)

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ワークショップハウス(天井・壁:構造用合板+塗装拭き上げ 床:杉)

 

 

「素材はできるだけ『素』のままが好き」

内部仕上げ材について
内部仕上/インテリアである内部を覆う材料について考えてみる。
表層材と言えば、代表的なものが「ビニールクロス」その他探すとなると数限りなく、タイル・土・木・紙・石・塗装etc.

 

その中で選定する時に大事にしていることがある。
まず、テカリが少ないもの。
そして、手仕事の跡が残りやすいもの。
素の素材で使えるもの。である。

 

テカリがなく光をうまく吸収してくれたり、拡散してくれる素材はインテリア全体を嫌味なく引締めてくれる。また、塗り壁や塗装、突き板や板貼りなどの手仕事が残る素材は温かみや安らぎを与えてくれる。そして、「素」の素材が持つ圧倒的な存在感。表層を繕うことなくそのもので勝負できる「素」の素材。日々そんな材料を求めて色々なものを眺めている。

 

そういった目で建築現場を眺めてみると、下地に使われる材料(完了時には覆われてしまう材料)の中には、とてもいい表情や存在感を持っていることに気がついた。例えば漆喰の下地に使う中塗りの材料。塗装の下地に使う材料。その様な素材に陽の目を見せることで、コスト削減をしつつ、ありきたりではない空間を作ったり、空間の質の向上を実現できるのではないかと考えている。

 

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ヤマノコバコ(天井・壁:ビニールクロス一部 OSBボード素地 床:フレンチパイン)

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有田の家(天井・壁:ビニールクロス一部フレキシブルボード 床:オーク 一部モルタル素地)

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展望台の家(天井:杉板 壁ビニールクロス一部杉板 床:フレンチパイン)

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茶花の里社屋(天井:梁・杉野地板現し 壁:AEP塗装 床:1階着色モルタル 2階アピトン)

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糸島の家(天井:杉野縁材 壁:RC打放し 床:栗)

 

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糸島の家(天井・壁:ボードベース 床:栗)

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久留米の家(天井・壁:漆喰ベース 床:バーチ)

コアのある家

コアのある家(天井:木毛セメント板 壁:ラワンベニア素地・フレキシブルボード素地 床:クク・磁器タイル)

 

 





2019.08.6
第1回 素材について考える1(外壁編)

コアのある家 東面2

早いもので前回のブログを書いて一年以上が過ぎてしまいました。

お陰様で法人化して5期目を無事終える事ができ6期目に突入しています。

そこで今期は心を入れ替えて、この「にっき」をもう少し更新してみようと思い立ちました。毎回テーマを決めて、僕はどんな事を考えて「建築」・「住宅」の設計に向き合っているのか?

 

「家」とは?「間取り」とは?「素材」とは?etc…

 

自分自身の確認の意味でも独り言の範囲で書き留めたいと思っています。

まずは「素材」についての考えについて書いてみます。

僕の基本的な思考は、 「素材はできるだけ『素』のままが好き」です。

なるべく飾らない「素」のままで作る事ができないか?そんな事を思っています。

 

それでは第1回目です。
外壁について。
建物を外側を覆う材料について考えてみる。外壁は建物の躯体を守ってくれる最初の砦である。また外観を左右する大事な要素でもある。「建物」は所有者のものである事は間違いないが、その「外観」は町や地域、都市を形成する要素であり「公共性」を内包する。したがって、外壁はその建物のカタチや大きさと共に周辺に対する配慮が必要だと考えている。風景や地域にに対する、その建物の「立ち居振る舞い」が大切だと考えているのである。勿論「建物を守る事・内部環境をより良く出来る事」も重要である。その様な事を考えてそれぞれの建物の設計に日々勤しんでいる。

では、現在外壁に使える材料の選択肢は何があるだろうか?

住宅を中心に考えれば、主流は専ら窯業系サイディングである。その他の材料を考えてみると金属系サイディング、ガリュバリュウムに代表される金属板、タイル、木、セメント系塗り壁、コンクリートあたりか。若しくは其れ等を下地に表面塗装を行うこと。変わり種で言えば昔はよく見かけた漆喰壁か屋根材でよく使われるシングルやコロニアル。稀に石貼り等が考えられる。

 

僕の設計ではその中でも「木」を好んで使うことが比較的多い。よく「木」の防火性能や耐久性、腐食について窯業系サイディングに代表される新建材系の材料と比べたネガティブな言葉をもらう。勿論、「木」は燃えるし腐る。色も変わればシミもつく。まるで良い事が無いようである。
翻って「サイディング」はセメント系だけに火に強く、腐ることも少ない。その上タイルや木を模した凹凸をつけたプリントで本物を使うより安価に疑似体験することができる。その上メンテナンスフリーに近い。これが一番の理由なのかも。

 

それでは、「木」はそんなに悪い事ばかりなのだろうか?
そうでは無い。だから僕は積極的に採用しているのである。
「木」には様々な表情があり一つとして同じ表情が無いし動く。よって硬くなりがちな建築の表情が柔らかくなり街に温かみを提供してくれる。

 

防火性はどうだろうか?普通に考えて「木」は燃えやすい。しかし、その下地材との組み合わせで防火性能を持たせることができる。また厚みを増す事により防火性能を増す事もできる。その他高価にはなるが防火材注入をしている商品も流通している。使い方次第である。

 

次に熱環境について。
外壁を「木」で覆う事により僅かながらにでも内部の熱環境にも寄与できるのでは無いかと考えている。
熱は対流・輻射・伝導によって移動する。そしてあらゆるモノは熱を保持する性格を持つ。その保持された熱は時間をかけて放射(輻射)されている。熱容量の大きいコンクリートの建物が無断熱だと夏の夜になっても暑かったり、冬に底冷えするのはこの為である。
外壁も然りである。夏の昼間太陽に照らされたり、冬の木枯らしに晒された外壁はその季節の熱を蓄えているはずである。
「木」は主流の外壁材である窯業系サイディングよりも熱容量が小さい。つまり熱を保持しにくい。よって放射される熱も少ない筈なので内部環境はより良くなる筈だと考えている。

 

最後に腐朽について。
これは乾燥状態を保つことである程度は解消できる。乾燥していれは腐朽菌が繁殖しづらく腐りにくい。要は板の裏側にも通気層を作り雨などで濡れた場合でも乾燥を促す構造を施すことで対応できる。その他保護剤を塗布することで更に寿命を延ばす事が出来るので保護剤(塗装)をする事が多い。但し、この表面塗装には細心の注意を払いたい。表面に着色をすれば「木」が化粧されて綺麗に見えるのだが、時間が経てばその着色が褪色して人によっては「ボロさ」を増したと感じる事がある。したがってそれを気にされる方は細かな塗り直しが必要になる。そうする事で新築当時の様な状態を保つ事は可能にはなる。 無着色に近い状態であれば「木」そのものの色素が抜け褪色し「銀白化」しその後「煤けてくる」それ自体も前述の「ボロさ」に繫がる事であるが、「素」の素材をそのままに近い状態で使う事により「素材」が「自然」に変化する事であるので「劣化」と捉えるというより「良い味」が出てきたと考えている。

 

実はこれと同じ事は「木」に限らずその他の材料についても同じように考えている。セメントはセメントらしく、金属は金属らしく使うのが一番「自然」であり素材が生き生きして最も輝くのではないかと考えている。

要は「素」のままが良い。

糸島の家 糸島の家(杉板+キシラデコールやすらぎ)

耳納の家  耳納の家(杉材をサーモウッド加工)

有田の家  有田の家(杉板+ウッドロングエコ)

展望台の家  展望台の家(杉板+キシラデコールやすらぎ)

丘の上の家  丘の上の家(杉板+ウッドロングエコ)

eight  eight(杉板+ウッドロングエコ)

コアのある家 西面  コアのある家(杉板+ウッドロングエコ)

HOUSE F  HOUSE F(杉板:防腐注入材)